2012年10月30日火曜日
ゼロ年代SF傑作選 / SFマガジン編集部
なんでも奴が言うにはーーこの「大空」の重力方向の遥か彼方、つまりずっとずっと下に、大空と同じくらい広大な個体の平面があるのだという。
そんなものがあってたまるか、と私は思った。
という、秋山瑞人の「おれはミサイル」ほか7篇を収録の日本SFのゼロ年代を代表する「リアル・フィクション」を担う作家たちによる短編集。
秋山瑞人「おれはミサイル」
冲方丁「マルドゥック・スクランブル"104"」
長谷敏司「地には豊穣」(「あなたのための物語」のスピンオフ)
から桜坂洋、新庄カズマ、と素晴らしいメンツが続く。
スピンオフが3つも入っているのは残念な気もするが(全部読んでいるので問題はないにしても)、それぞれ純粋に短編として楽しめるのでまあ良し、かな?
秋山瑞人の陸海空三部作のひとつを読むためだけに手にとっても後悔はしない一冊。
陸はいつ読めるんだ。
ゼロ年代には小川、野尻、林、小林、飛もいるし、円城、伊藤もあることを考えると、なんと豊穣なSFの時代であることでしょう。
10年代もよろしくお願いします。
メグとセロンVII 婚約者は突然に / 時雨沢恵一
「セロン君は、私を好きだと思いますか?」
という、メグとセロンⅦ、最終巻。概ね大団円?
大変楽しめました。
メグの混乱ぶりが可愛いです。
部員たちの信頼してる感と、見守り様が好きです。
予測を外れるような展開にはならない安心感がこのシリーズのいいところです。
そしていい人ばっかり出てくるようでいて、スパイスの様に悪人が登場します。
結局、後のシリーズほど巻数が多いという事になってしまってますね。
こうなるならアリソンももうちょっとやってくれても良かったのに…と思ってしまうのはファン故か。
ちょっとあっさり終わってしまったような感があって物足りないけれど、
来年には「アリソンとヴィルとリリアとトレイズとメグとセロン(仮題)」があるのでそちらを期待して待つことにしましょう。
2012年10月3日水曜日
人類は衰退しました ⑥ / 田中ロミオ
2012年10月2日火曜日
人類は衰退しました ⑤ / 田中ロミオ
「それは、たやすいねがいです?」
人類は衰退しました、その5冊目。
待望の過去話の登場で、大増ページでお送りします。
まだ9歳の子どもだった「わたし」の、学舎での回想なお話、「妖精さんの、ひみつのおちゃかい」
と、
なぜか(もなにもないですが)世界がドット絵になってしまった「妖精さんの、いちにちいちじかん」の二本です。
ひみつのおちゃかいは、いかにも最終回って感じですが、子ども特有のさみしさが語られていてしっとり読めます。
期間も10年ほどを中編で駆け抜けるので、卒業やラストシーンでは長い時間を感じてしんみり。
今までとはかなり毛色が違いますが、このお話は好きです。
「クリケット」の小ネタも好き。
二話目で通常進行に戻ってるので安心です(?)
「不条理レベルが低いと、どうなるんでしょ?」
「しりあすになる」「すとーりーがくらくなる」「きれいごとがなくなる」「しゃれですまなくなる」「ばくはつおちでほんとにしぬ」
2012年9月11日火曜日
人類は衰退しました④ / 田中ロミオ
「フフ……落ち込むときは、狭いところに限りますよね……?」
平常運転の第4巻。
里で食べ物が不足して困ってたら、いつのまにか不審な(明らかに妖精さん由来の)食べ物などなどが現れたので工場に調べに行くお話と、
妖精さんの人口過密を解消するために移住しようとしたら漂流して、島の土着植物を遺伝子改造するなどして食べ物(とお菓子)をゲットしようとするお話の2本です。
…食べ物の話ばっかりですね?
文明の衰退期には食べ物、大切ですからね。
工場探検は、「チャーリーとチョコレート工場」っぽくなるのかなと思ってたらちょっと違いました。
あんな感じで探検するのも見てみたかったですね。
この方向でのんべんだらりとやっていってもらえると嬉しいな。
シリアスはたまでいいと思うのですが。
「……むのうで、ひんじゃくな、ぼくら、をみすてないで?」
2012年9月9日日曜日
人類は衰退しました③ / 田中ロミオ
「見ないで。醜いわたしを見ないでください」
人類がゆるやかな衰退を迎えてはや数世紀、なファンタジー風SF③。
今回は大長編です。映画版です。
ヒト文明についての記録を残そうという「ヒト・モニュメント計画」。
人類文明末期の、過去の未来都市遺跡を探検することになった「わたし」と「助手さん」は
何百年ぶりかに電源投入された都市の中で遭難してしまいます。
体力を使いはたし、水も尽き、命の危機の只中で見たものとは。
過去の文明視点のおかげで、妖精さんの謎や情報断絶の理由などにも少し回答が与えられてSF的に嬉しいお話でした。
スタートレックネタも出てくるし(オヤジ)。
それと滅びた未来技術が垣間見れたのも。
「スクリプトが組める人間ひとりいればどんな建物・機器・部品でも作れる流体金属、ネット上のサンプルソースで日曜大工ならぬ日曜工学」
とか「塩基計算機で見せかけの魂を得た機械」とか、上手く使ってて楽しいです。
結末も大長編らしくまとめられてます。こういう解決策か…!と。余韻もあって好きな感じですねえ。
巻を重ねるごとに満足度が上がってます。次も楽しみ。
「いきてはおれぬです?」
「あれはくるです」「ひかりとかはへいきなんだけど」「でんじばにはいられぬですな」「むりむりだー」「かきみだされるゆえ」「くるおしくなることも」「いきるちからをうしなうとのこと」「かなしみをもたらしすぎます」「こまるー」「だから」「にげなきゃです?」
2012年9月6日木曜日
人類は衰退しました② / 田中ロミオ
「こ、このスプーンです!このスプーンがわたしをこんなポータブルな体に!持ち運びのしやすい体に―――っ!」
ほのぼの黄昏SF、②。
よりSF色強くなっているようです。
ドラえもんの道具的に妖精さんの不思議アイテムで大変なことになる「人間さんの、じゃくにくきょうしょく」と、
タイムリープでループでバナナでスリップな「妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」の2本でお送りします。
タイムスリップ物は楽しい。
ネタバレを避けて感想を書けないのが残念ですが、「すぐおいしいけど、すごくとおくにとばされるばぐが」あったばーじょんのバナナで飛んだ先のジョシュサンが二重の意味で関わってきているあたり上手いな〜と。
不条理込みでなんでもアリ、な妖精さんのせいにしておけばどんな話でも出来るこのシリーズは可能性無限ですねえ。
続刊でどんなトンデモに発展してくれるのか楽しみです。
2012年9月5日水曜日
千年ジュリエット / 初野晴
「教えて欲しいんじゃなかったのか?」
「な、なにをですか?」
「ハードロックにきまっているだろうっ」
日常ミステリ"ハルチカ"シリーズ、第4弾。
吹奏楽部で全国を目指す真面目な青春ミステリの皮を被って、どこまで本気で読めばいいのかわからない不条理ギャグが本質と思わせて、
オチは重めのテーマでしんみりずっしりさせる異色ミステリです。
爽やかな表紙は詐欺です。トラップです。
今回は文化祭を巡る連作短編。
一番アホだと思ったのは「失踪ヘビーロッカー」。
ハードロックで人生を表現するアメリカ民謡クラブの部長が、本番直前失踪した!
彼はタクシーの運転手にこう告げていた。
「そのまま法定速度を守って、俺がいいというまでこの街をぐるぐるまわるんだっ」
部長の身になにが起こったのか!?
…アホです。
トリックについて考えるのが面白かったのは「決闘戯曲」。
右目が見えず、左手が使えなかった三人の決闘者。
彼らは如何にして勝利したのか?
締めの「千年ジュリエット」は最もアホさがなくてじっくり楽しめてこれが一番好きかな。
大学病院の一角で密かに集まりを開く5人の入院患者。彼女たちが始めたネットでの恋愛相談。
その1人が南校の文化祭を訪ねてくる。
○○トリックは、もうちょっと引っ張って欲しかったかも。
ーーキョウコが座るばしょには、紫色のバッジとイチゴミルク味の飴が置かれていた。
2012年8月25日土曜日
岳 7 / 石塚 真一
人類は衰退しました1 / 田中ロミオ
「単純に言えば、妖精はたくさん集まると面白いことをおっぱじめる、ということだ。
人間以上の知性とリソースと効率と情熱を総動員してな」
ゆっくりと人口を減じ、科学技術も失われ、都市は放棄され、生活圏も縮小し、今にも消え去ろうとしている、人類。
そして、引退したヒトは、地球人類の座を彼ら「妖精さん」に明け渡した。
という、「人類は、衰退しました」。
ほのぼの終末モノと言うことで「ヨコハマ買い出し気候」かと思いましたが「ねこめ~わく」の方でした。
小さくて可愛い生き物達はヒトが大好きで、ヒトの状況はとても寂しい物ですが、悲壮感はありません。
なにしろ後を継ぐ者たちがいるのですから。と言うと、ほら一緒。
主人公は、ヒト最後の学校を卒業した「わたし」。
卒業後の進路を、妖精とヒトの仲立ちをする「調停官」に求めて故郷に戻ってきたところから始まります。
妖精さんを捕まえて名前を付けたら女神に祭り上げられたり、妖精さんが一夜にして未来都市と巨大ロボを作り上げたりする第一話と、
妖精さんが折り紙で光合成原核生物を作ったら
進化しちゃって大変…?な第二話で構成されています。
二話目のオチは、SukosiFusigiな感じでとても良かったです。
内容の薄い、ただのほのぼのかと思っていたので予想外に当たりでした。
ヒト以上の知性を持った後継種族が、ぽやんとした子供もみたいな妖精、というのも面白い。
続刊にも期待です。
「にんげんさんだー」「うおー」「まじなのです」「ちかよってもへーき?」「おこられない?」「これからどーなってしまうのかー?」「あやー」「おおきいですー」「ごぼてんすきです?」「ひえー、ひえー」「のっけてくださいー」
2012年8月7日火曜日
天獄と地国 / 小林泰三
「人類が太古に住んでいたという、原初の世界さ。そこでは重力が外から内へと向かってたんだろ。」
ハードSFを書かせたら、とことんハードな小林泰三の、短編から長編に昇格した一作。
頭上に地面、足下に星空が広がる世界、
全てのものは手を離しただけで空の彼方へ落ちて行く世界。
人々は僅かな資源を、分け合い、奪い合い、どうしようもなく衰退しながら暮らしている。
明らかに生き物が暮らすには向かない、過酷すぎる世界。
主人公カムロギは、地面の上にある、と神話が言う「地国」を目指して北限の地を目指す。
ちょっと読み進めれば分かるので書いてしまいますが、要するに巨大な宇宙コロニー(的な物)の外側にへばりついているのですね。
例によって出てくる数字を計算すると、世界の全容が詳しく分かる仕掛け、だそうです。
計算結果はこちらへどうぞ↓
http://www2s.biglobe.ne.jp/~ttsyhysh/diary/di0207d.html#020722
答えが分かるとものすごいセンスオブワンダーを感じることができるんですけどね。
これほどの驚きはなかなか他の人ではないですよ!
でも、読者の何%が計算すると思ってるんだ…?
「リヴァイアス」みたいな怪獣大決戦がメインで、全体的にはスペクタクル。
ナタの出生話は、極限状態の狂気って感じで良かったです。
以下愚痴。
ラストはどう取れば良いかわからずぽかーんとするしかない感じ。
長老ザビタンのネタは、笑うところか悩む。萌えを狙ったのでは、ないよね…?
カムロギ、生活困窮具合と比べてインテリ過ぎない?
2012年6月6日水曜日
岳 6 / 石塚真一
2012年4月1日日曜日
3月のライオン7 / 羽海野チカ
2012年3月31日土曜日
春待ちの姫君たち / 友桐 夏
白い花の舞い散る時間 / 友桐 夏
だから、あたしたちはそれぞれまた新たな仮面をつけて会ってみましょうよ。
本名でもハンドルネームでもない、新たな名前を用意するの。
という、「リリカル・ミステリー」です。コバルト文庫です。
同じ塾に通っているというだけの共通点を持っていて、しかし互いの顔も知らない5人が、
本名を隠したままオフ会を開催する。
舞台は人里はなれた洋館「ムラサキカン」。
さて、誰が誰なのか?
というお話だと思ったら、本命はそこではなくて、それぞれの家庭環境がみんな特殊で、あれ、ちょっと共通点が・・・?
というお話でした。
冒頭の展開から知能的かけひきな物語を期待してしまったのでちょっと肩透かし。
語られる家庭環境から導かれる物語を考えるというのはミステリっぽくて良かったけど
ちょっと後味悪めなラストでカタルシスがないのですっきりしませんでした。
米澤穂信関連のストリームで褒められていたので、期待しすぎだったかもしれません。
悪い意味でのコバルトっぽさはあんまりなくて
良い意味で子供向け少女小説しているのでこれはこれで。
デビュー作なので多少文章がこなれてないのはスルーして、もう1冊読んでみます。
デビュー作なので多少文章がこなれてないのはスルーして、もう1冊読んでみます。
2012年3月28日水曜日
故郷から10000光年 / ジェイムズティプトリーJr.
2012年3月13日火曜日
地球の長い午後 / ブライアン W.オールディス
老いた世界にふさわしく、地球にはクモの巣がはりめぐらされたのだ。
はるか未来。
太陽が大きく赤く膨らみ、地球は熱く熱せられている世界。
地上に生きる動物はたったの5種類となってしまい、地を支配するのは植物たちだった。
という「地球の長い午後」。1961年の作品です。
図書館の本ですが、とっても年季が入ってます。ボロボロの一歩手前。往年の名作感たっぷり(?)
遠未来の終末的世界設定はマンアフターマンっぽくて楽しいです。
自転が太陽に対して完全に止まってしまっているので地球の半分は永遠の夜、半分は永遠の昼。
その昼部分の大陸はひとつの大木、ベンガルボダイジュが覆っています。
植物たちは消えた動物たちの生活圏を肩代わりして動けるようになり、弱肉強食の争いをしています。
人間はというと、生き残った5種類の動物にかろうじて入っていて、捕食植物から隠れ生きる生活をしている。
そして月は地球ー太陽間のラグランジュ点に固定されていて、地球との間に宇宙を渡る植物ツナワタリによる糸が張り渡されている。
そんな世界です。
実際には自転が止まると昼と夜の温度差で、特に黄昏地域は常に暴風域になって暴風グレンたちは吹き飛ばされてしまうと思いますが、その辺は古い本なので…。
ストーリーよりは世界の説明がメインな感はありますけれど、一読の価値はあり。
天冥の標Ⅴ: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 / 小川一水
「葉物は鮮度が命だからな」
という天冥の標、第5巻。
3,4は正直いまひとつだと思っていましたが、
5は文句なく最高です!
今回は、今から遡ること6000万年前、地球から遠く離れた惑星の海の中で「我あり!」と覚醒したノルルスカインの誕生から長い旅の話と、
西暦2349年、アステロイドベルトの小惑星の一つで細々と農業を営む農夫タックヴァンディのお話。
超銀河団規模の舞台とアステロイドベルトあたりでウロウロしてるお話が並行で語られるのが面白いですね。
サンゴ虫(に似た生き物)を(人間でいう)ニューロンのひとつひとつのようにして
そこから発生した意識、という地球外知性というのは斬新でわくわくしますよ。
しかもサンゴたちそれぞれも自意識があるという。
(他にも前例があるのかも知れないけれど、私は知らない。あったら凄く知りたい。)
つまり、隣り合った細胞と細胞の化学反応から意識というものが現れているのなら
隣り合ったサンゴ虫とサンゴ虫の相互反応の積み重ねから意識というものが生まれても不思議でないというネタです。
小惑星農業のほうも、宇宙で農業するっていうのがどういうことなのか、興味深いことしきりです。
アニーがアレだったあたりは、こう来るか~!と膝を叩いてしまう展開で大興奮。
間に小ネタとして、「銀河ヒッチハイクガイド」ネタが挟まれています。
スポンジが大変重要視されていてタオルがとっても貶められています。
つい笑っちゃったけど、ちょっと強引じゃないかな~?
5巻までの各巻を面白い順で並べると
2>5>>>3>4、かな。
1巻はまだ評価できません。巻が進むごとに1巻が面白くなっていきます。
ところで、
0.8光速で進むオムニフロラがボイドを渡るのに3000万年というのはずいぶん早い気がします。
Wikipediaによるとボイドの直径は1億光年以上。
真ん中を渡る必要はないけど、ボイドの端っこをちょっとショートカットしただけ?
「ぼくは思ったよりもたくさん見てしまったから」
「何を?」
「人が、可憐に滅んでいくさまを」
2012年3月3日土曜日
群青神殿 / 小川一水
2012年2月19日日曜日
桜色の春をこえて / 直井章
カーサ
「帰ろう、私たちの 家 へ」
絵に描いたように不幸な女の子がふたり、
突然同居暮らしをすることになる。
はじめは歯車の噛み合わないふたりだけどだんだんお互い掛け替えのないものとなっていく。
というお話。
主人公の一人称がクールで好感。
不幸具合も容赦なしで、読んでて胸が苦しくなります。
著者のデビュー作ですが、
特筆するほど上手いところはないし、
他に本を出しているか調べる気になるわけでもない。
でもなんか好きです、この本。
桜の花が舞う情景が綺麗です。
どこで何を見てこれを読むことにしたかも忘れてしまいましたが、良い出会いだったと言えます。
しかし、単語や文法の間違いが多い・・・。
中高生が読むライトノベルだからこそ、こういうところはキチンとして欲しいですよ。
2012年2月13日月曜日
約束の方舟(下) / 瀬尾つかさ
「ああ。きれいだろ、俺たちの新しい地球は」
星間移民船ジュブナイル、後編。
さらに3年経ち、シンゴたちは18歳になり、船は後10日で目的地タカマガハラⅡの周回軌道に乗る予定。
人々と共生しているゼリー状生命ベガーを巡る、子供たちと大人たちとの溝はむしろ深まっていた。
そんな中、スイレンの書き上げたベガーの生態についての論文が新たな火種となり…。
というお話。
とっても良いジュブナイルSFでした。
目的地到着という希望の日が、ベガーに対する社会のあり方が変わる変革の日でもあって、
その日までになんとか力を付けてベガーを護ろうとする子供たちという図式が、読んでいて応援したくなってしまいます。
悲壮なまでのがんばりを見せるキリナ、スイレン、ケンたちとあくまでお気楽な彼女の対比が面白い。
スイレンは幸せになってくれたのでしょうか…?
ラストの余韻感も好きです。
鯨というと、「クジラのソラ」のクジラを思いうかべてしまいますが、関係あるのかな?
読み返してみると発見が、あったりすると楽しいのですがさて。
「シンゴは偉くなった」
「六年前よりずっと頼もしくなった」
「わたしもがんばらないと」
ーーもうすぐ旅は終わる。
県庁おもてなし課 / 有川浩
ーー彼らは実に、悲しいほどに、どこまでも「公務員」であった。
という、実在の高知県庁おもてなし課をモデルに書かれた、地方観光再生の物語。
自然以外になんにもない高知県という田舎をどうすれば観光立県として盛り上げられるか。
ひいては外貨収入を増やして自治体破綻を回避し、先細りの見えている現状を打破出来るか。
頭の固いお役所に、それをさせるには、どうすればいいのか。
ちょっと緩めのプロジェクトX的お話でした。
これが面白いかっていうと、面白い。
まず語り口が上手い。
やはり有川浩という作家は上手い。
前半の、お役所をボロボロにけなしながらも次々とその代案が出てくる展開は、主人公に感情移入してしまって苦しくなるけど、こうなればいいのに、が実現していく楽しさが溢れていて凄く好きです。
後半はもうちょっと先まで描いて欲しかった。
成果が出るところまで行ってないので消化不良です。
現実のほうに合わせると仕方なかったのかも知れませんが。
これが小川一水だったら最後の「夢」のところが実現した上で宇宙人が現れて地球テーマパークプランくらいまでやってくれるのになあ…。
現実的なところが面白いところといえばその通りです。
これ、全国の田舎県でこぞってやってくれないかな。
パラグライダーやってみたくなりました!
以下役体のない愚痴。
吉門さんが有川浩をモデルにしてると思うとちょっとなんだかなあと思ってしまったり
「パンダ誘致論」が有川浩のパパの発案だと2回も言っちゃったりだとか、
この人、もうちょっと裏事情は隠しておいてくれないかな…。
あと主人公がBL思考なのが…。
2012年2月8日水曜日
シュレディンガーのチョコパフェ / 山本弘
詩人をよこせというのだ。
詩人にだったら重大な秘密を打ち明けてもいいと言ってきた。
しかもそれは、星間文明滅亡の原因に深く関わるものであるらしい。
という、山本弘の短編集。
先進波発生装置で世界の消滅をたくらむマッドサイエンティストの表題作「シュレディンガーのチョコパフェ」
時間圧縮装置を付けられたサイボーグの話「奥歯のスイッチを入れろ」
異星人とともに、謎の海賊船を追っていく話「バイオシップハンター」
文明消失の謎を解くため、超文明の末裔に出てこないかと話を聞きに行ったら詩人にしか話さないぞと言われた話「メデューサの呪文」
情報だけやりとりしてエントロピーが変わらないからタイムトラベル出来るよ、という「まだ見ぬ冬の悲しみも」
人類の7パーセントは哲学的ゾンビだった話「七パーセントのテンムー」
実在の人物をなぜかクトゥルフ的ホラー話の主人公にしてしまった「闇からの衝動」
以上7編。
好きなのは「メデューサの呪文」かな。
物質文明を捨てた種族というはなしは良くあるけど、その先が言語文明というのはなかなか面白い。
言語兵器というガジェットもいくらでも広げられそうで楽しい。
「呪法宇宙 カルシバの煉獄」というSFで、「感染」した敵の使う「呪文」を聞くとその人間も感染してしまう話がありました。
宇宙中に広がってしまうかも知れない、という怖さがよく似てます。
「象られた力」も通じるところがありますね。
あと「食前絶後」の言葉とか。
説教くさい、と解説でも言われているのはいつも通り。
説教というよりは愚痴っぽい。
このへんはやっぱりちょっと好きになれない山本弘っぽさです。
主人公たちのおっさんくさい性格も今ひとつ好きになれないし、
「天然無能」がスラング化して「テンムー」になるセンスも合わない感じ。
でもそれでも読んでしまうSFとしての面白さがあるんです…。
アンビバレンス。
約束の方舟(上) / 瀬尾つかさ
「でもね、きっとそれは嬉しいことなんじゃないかって。」
100年の時を渡る多世代型恒星間移民船。
突然現れた、バガーと呼ばれるゼリー状異星知的生命との戦争と和睦から15年。
戦争で区画の7割が破棄され、人口は6分の1に、宇宙服は数着しかなくなってしまった社会で、
唯一、宇宙服の代わりとなったのが、戦争相手の異星生命バガーだった。
戦争を経験した大人たちはバガーを嫌悪、恐怖するが、
戦争を知らない子供たちは、バガーをかけがえのない友人として、真の共生社会を目指す…という箱庭SF。
恒星間移民船モノは大好きです。
広大な宇宙に乗り出して行く未知への挑戦な感じとか、
それでいて孤立無援でさみしい感じとか、
あと悲愴感とか。
限られた物資、閉じられた空間のなかで工夫があったりするのも好き。
時には出発時の技術を失伝して、ロストテクノロジーとして掘り出したりするのもワクワクします。
主人公は少年少女で、ライトノベルというよりはジュブナイルSFな風味があります。
天才の女の子を追いかける秀才の男の子の構図が、どことなく「サマー/タイム/トラベラー」の雰囲気。
異形の他星生命で、バガーってのは、ベガー@「エンダーのゲーム」を思い出しちゃうけど関係あるのかな?
シンクして船内を飛び回る感じも、エンダーの訓練シーンを想起させるようなところがあります。
読んでから気づきましたが、「クジラのソラ」の著者だったのですね。
他の本も読みたくなりました。
新天地到着まで、あと3年。
後編が楽しみです。
2012年2月3日金曜日
ますます眠れなくなる宇宙のはなし~「地球外生命」は存在するのか /佐藤勝彦
「みんな、どこにいるのだろうね」-エンリコ・フェルミ
「眠れなくなる宇宙のはなし」の続編、「ますます眠れなくなる宇宙のはなし」です。
もちろん著書は佐藤勝彦先生です。
ホーキングもそうですが、世界トップクラスの物理学者が一般向けに書いた本がほいほい読めるなんて、いい時代だと思います。
寝る前に1章ずつ読んで、1章読み終わったら「おやすみなさい」と言ってもらえる、という趣向の本です。
今回は地球外生命はいるのか?というおはなし。
フェルミのパラドックスやドレイク方程式から、
火星のタコ宇宙人の話、
地球の生命の成り立ちの話、
太陽系以外の惑星探しの話、
そして、宇宙人探しの話。
が、わかりやすく、面白く、語られます。
特に第四夜「第二の地球はいくつあるのか」はワクワクが止まりません!
今、続々と発見され続けている系外惑星の最先端の情報山盛りです。
宇宙人を探す「SETI」は、無駄遣いと言われる宇宙関連のなかでもいちばん無駄遣いなプロジェクト群だと思いますが、ロマンに溢れまくっています。
自分が生きているうちにファーストコンタクト、ないかなあ…。
アバタールチューナーⅤ /五代ゆう
「サーフ
「わたしたち、<神>を助けるの――それとも、殺すの?」
という終末系能力バトルSF第5巻、完結編。
なんだか「神狩り」みたいになってきましたが、
次元が上の存在である狂った神さまをなんとかしないと、地球は完全に滅びるぞ!な感じで悲壮感上乗せです。
バトルシーンは若干飽きてしまうようなところもありましたが、重めのストーリーは読み応えあって楽しませていただきました。
五代ゆうに合っている素材だったんだろうな~と思います。
地上編より、ジャンクヤード編が好きでした。
「ジャンクヤードに降りて、
わたしははじめて人間になった。
人間であることのすばらしさを、
生きることの光を、それから罪を、知ったの。サーフ。」
2012年1月16日月曜日
宇宙の誕生・ビッグバンへの旅 (ホーキング博士のスペースアドベンチャー 3)/ルーシー&スティーブン ホーキング
「宇宙の中で、ブタにとっていちばんいい場所はどこ?」
という、ホーキング親娘の著した子供向け科学解説ものがたり、スペースアドベンチャーシリーズの3。完結編。
今回はLHC(大型ハドロン衝突型加速器)に爆弾が仕掛けられた!エリックとLHCを守るぞ子供たち!というお話。
宇宙の成り立ちから相対性、11次元まで最新の宇宙物理トピックスを分かりやすく教えてくれます。
お話としてもわくわくドキドキで、小学生たちにはとてもおすすめ。
娘に読んでもらいたい本、第一位です。
ところでホーキング博士は先日70歳の誕生日を迎えられました。
持病のことを考えると、すっごく長生きです。
まだまだ地球にいて欲しいですね。
2012年1月6日金曜日
ブギーポップ・アンノウン 壊れかけのムーンライト/上遠野浩平
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