2012年3月13日火曜日

天冥の標Ⅴ: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 / 小川一水


天冥の標Ⅴ: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 (ハヤカワ文庫JA)




「葉物は鮮度が命だからな」 

という天冥の標、第5巻。 

3,4は正直いまひとつだと思っていましたが、 
5は文句なく最高です! 

今回は、今から遡ること6000万年前、地球から遠く離れた惑星の海の中で「我あり!」と覚醒したノルルスカインの誕生から長い旅の話と、 
西暦2349年、アステロイドベルトの小惑星の一つで細々と農業を営む農夫タックヴァンディのお話。 

超銀河団規模の舞台とアステロイドベルトあたりでウロウロしてるお話が並行で語られるのが面白いですね。 

サンゴ虫(に似た生き物)を(人間でいう)ニューロンのひとつひとつのようにして 
そこから発生した意識、という地球外知性というのは斬新でわくわくしますよ。 
しかもサンゴたちそれぞれも自意識があるという。 
(他にも前例があるのかも知れないけれど、私は知らない。あったら凄く知りたい。) 
つまり、隣り合った細胞と細胞の化学反応から意識というものが現れているのなら 
隣り合ったサンゴ虫とサンゴ虫の相互反応の積み重ねから意識というものが生まれても不思議でないというネタです。 

小惑星農業のほうも、宇宙で農業するっていうのがどういうことなのか、興味深いことしきりです。 
アニーがアレだったあたりは、こう来るか~!と膝を叩いてしまう展開で大興奮。 


間に小ネタとして、「銀河ヒッチハイクガイド」ネタが挟まれています。
スポンジが大変重要視されていてタオルがとっても貶められています。 
つい笑っちゃったけど、ちょっと強引じゃないかな~? 

5巻までの各巻を面白い順で並べると 
2>5>>>3>4、かな。 
1巻はまだ評価できません。巻が進むごとに1巻が面白くなっていきます。 

ところで、 
0.8光速で進むオムニフロラがボイドを渡るのに3000万年というのはずいぶん早い気がします。 
Wikipediaによるとボイドの直径は1億光年以上。 
真ん中を渡る必要はないけど、ボイドの端っこをちょっとショートカットしただけ? 


「ぼくは思ったよりもたくさん見てしまったから」 
「何を?」 
「人が、可憐に滅んでいくさまを」 

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