2011年8月1日月曜日

“文学少女”と恋する挿話集4 / 野村 美月




 「で?あなたは恋をしたの?」
 遠子の目が、甘く輝いた。
 唇をほんの少しだけほころばせて――愛おしそうに、ささやいた。

 「しています、ずっと」



文学少女、挿話集の4。
番外編「見習い」の番外編が1編に、
美羽、ななせ、麻貴の子「蛍」、舞花のそれぞれその後編。
を含む全13編で読み応えたっぷりでお送りします。

美しい世界の中にも悲しいことや辛いことがある、というスタンスだった本編とは違って、
幸せなことばかりで埋め尽くされている挿話集。
竹岡美穂のイラストと相まって、輝くばかりの情景に溢れています。

この本を読んで幸せになれるのも、本編で彼らがどれだけ苦しんで、がんばっていたかを知っているからでしょう。
重厚で長いお話の番外編の面白さ、というのを目いっぱい実感できます。

こういう番外編が作れるのは何冊にも渡って書かれるライトノベルというジャンルの
特性、いいところ、だと思います。


珍しく、今巻では自分も読んでいるお話がいくつか題材だったので
遠子先輩の言っていることが面白く読めました。
面白く、というか・・・
坂口安吾「桜の森の満開の下」を「恐ろしい」と言いながらも
「う~ん、美味しい!」と言ってしまう先輩は、さすが文学少女・・・!
と唸ってしまいます。
「深く繊細な味わい」で、「凄絶なほどに美しい」のは同意しますが!
あのグロさとホラーな緊張感を食べて「目を閉じて、じぃぃぃぃぃんと」は出来ません!


ほかには、
「見習いの、発見」での「銀河鉄道の夜」
「おやつ」での「かもめのジョナサン」も既読でしたが

菜乃が解説するお話は遠子先輩が語るよりも庶民的で分かりやすいというか
物語の登場人物について、一緒に考えて行けるので、寄り添いやすいですね。
実はこっちのほうが好きかもしれません。

「かもめのジョナサン」は後半はやっぱり好きになれない本でした。
宗教色強くなってくると先輩が言うように「おなかの中にズシンとたまる」感じ。
前半の、ジョナサンががんばって上手く飛べるようになっていく爽快感は好きなんだけどな~。


ということで、既読本が題材だとやはりもう1段階面白く読めるということがわかった最終巻1冊前。
これは、やはり題材になったアレコレを読んでから、始めから読み返すべきでしょうか・・・!?

それだけの価値がある物語だと、今更ながらに再認識しています。
何年もかけて、読み込んでいく価値のあるものだと。

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