2011年8月16日火曜日

俺の妹がこんなに可愛いわけがない8 / 伏見 つかさ




 「……他に、好きな人がいるの?」


という第8巻。
可愛い女の子が、可愛いことをする、だけの本です。
が、侮ってはいけない。
読んでいて楽しいシリーズです。

2011年8月14日日曜日

果しなき流れの果に / 小松左京



 N大学理論物理研究所助手の野々村は、
 ある日、研究所の大泉教授とその友人・番匠谷教授から一つの砂時計を見せられる。
 それは永遠に砂の落ち続ける、砂時計だった。

 彼らは知る由もなかった。
 その背後で十億年もの、時空を超えた壮大な戦いが展開されていようとは――



という、SFの巨匠小松左京によるワイドスクリーンバロック

4次元的に閉じられた砂時計の謎を追って、それが出土した古墳へ向かうあたりはSFらしいわくわくがあって先を楽しみに読めたのですが
中盤から後半は舞台があまりにも飛躍してしまって、追いつくのが大変です。
あちこちに飛躍するわりに、各エピソードはあまり掘り下げられないので
どうしても物語が発散してしまっているような印象。

超未来人と、神のような上位階梯の存在たちとの争いは、
古典を読むにあたって避けがたい読みづらさもあって、
ぼーっと読んでいると良くわからなくなってしまいます。

しかし、序盤にあるエピローグ(その2)と最後のエピローグ(その1)を読むためだけに他の章すべてを読む価値は十分あります。
エピローグの物哀しさや、壮大な物語に対する小さな結末、な感じはとても好きです。

 ――――あなたたちすらこえるものとはなにか?
 ――――超意識の意味は?
 ――――進化管理の意味は?

メグとセロン VI 第四上級学校な日 / 時雨沢 恵一




 「新聞部は……、どうだい?」
 「最高です!素晴らしい人たちです。楽しんでいます。」



という、メグとセロンの6冊目。
リリアとトレイズよりも長いシリーズになってしまいました。
本編よりも続編、続編よりも番外の方が巻数が多いという一連の作品ですが、
「メグセロ」は学園日常モノなのでいくらでも続けられそうな感じです。


で、今回はさらに日常分増量で、

セロンの妹とメグミカの弟が、電話で初対面しながら登場人物紹介な「リイナとクルト」。

珍しくもニック主観で、
あの人が、なんと新聞部の顧問になってしまう掌編「顧問」。

学校行事でお遊びなオリエンテーリングで真剣に優勝を狙う、
その傍ら部長の過去を暴くぞ!という「どこへ行こうと、あなたはそこにいる」。

短期留学生が新聞部に入部した!
二人称で綴られる、田舎の一般人から見た、
超都会の超お金持ちたちの有閑倶楽部・体験談「我々は新聞部だ」

の4本でお送りします。


のんびりした生活の中にも、それぞれの部員たちがお互いを大切に思っているのがよく表れていて、幸せな日常です。

彼らがセレブな連中だということは分かっていましたが、
一般人からの視点で語られると、羨ましいも憎らしいも通り越してしまってます。

一般人視点といえば、4話目の二人称で進むというのはちょっと珍しくていいですね。
あなた=読者ということで、読者にもこの世界を初体験してもらいたいというところでしょうか。
意図は違いますが、雰囲気はテッドチャン「あなたの人生の物語」っぽくて好きです。
古川日出男「ベルカ、吠えないのか?」も二人称だったなあ。

その「あなた」たる、新人くんは再登場するのでしょうか?楽しみです。


普段、ロクシェ語でほわっとしたボケキャラなメグミカが、
ベゼル語で会話すると頼れるお姉さんになってしまうのがとても可愛くて良いと思います。

2011年8月8日月曜日

旅立ち。 卒業、十の話




10人の作家による、
小粒な短編が10編。
十の物語と言わずに、十の話と題するのは噛み砕いているつもりなのかしらん�

爽やかに、テーマ通りのお話を読ませてくれた、小路幸也「あなたの生まれた季節」が一番良かった。

もの凄くストレートで頬がゆるんだ、草野たき「覚悟してろよ、渡辺純太郎!」も良かった。

川端裕人「見よ、百億の鳩が迫っている」は、なにかの間違いのように紛れ込んだノスタルジックSF。

宇宙人の文化様式が地球で言う学校そっくりだったからって、やってきた彼らを転校生と呼ぶなんて、変で楽し過ぎる。


どれを取っても、「これはいらなかったな」と言うようなのはなく、良いアンソロジーでした。

2011年8月4日木曜日

扉の外 / 土橋 真二郎



強烈につまらなかった・・・。
久々にものすごい地雷を踏んだ。

まさか徹頭徹尾、俺SUGEEEEEオンリーのみだったとは・・・。
文章もあまりにも稚拙。

2011年8月1日月曜日

クォンタムデビルサーガ アバタールチューナーⅡ / 五代ゆう




 「作戦を続行する。
  俺たちは天に、<教会>と<楽園>に、<神>に、叛逆する。」


五代ゆうの箱庭SF、急転の第二巻。
ただの電脳空間ではない様子のジャンクヤード編はここまでです。

絶対の掟すら確かなものではなくなり、
急激に変容して破滅していくジャンクヤードで、サーフたち<エンブリオン>は
セラを守るために、自分たちの仲間を守るために戦う。
すべてを飲み込む混沌からの絶望的な撤退戦で、残された希望は神に等しい存在へ抗うこと。


ただの能力バトルものというだけではない緊張感にページをめくる手が止まりません。
設定だけ見ても目新しいというほどではない、むしろ陳腐なお話と思えるのに
こんなに力のある物語が綴られていると、もう続きが気になって仕方ないのです。

過去へ繋がる第3巻、早く読みたい・・・!

“文学少女”と恋する挿話集4 / 野村 美月




 「で?あなたは恋をしたの?」
 遠子の目が、甘く輝いた。
 唇をほんの少しだけほころばせて――愛おしそうに、ささやいた。

 「しています、ずっと」



文学少女、挿話集の4。
番外編「見習い」の番外編が1編に、
美羽、ななせ、麻貴の子「蛍」、舞花のそれぞれその後編。
を含む全13編で読み応えたっぷりでお送りします。

美しい世界の中にも悲しいことや辛いことがある、というスタンスだった本編とは違って、
幸せなことばかりで埋め尽くされている挿話集。
竹岡美穂のイラストと相まって、輝くばかりの情景に溢れています。

この本を読んで幸せになれるのも、本編で彼らがどれだけ苦しんで、がんばっていたかを知っているからでしょう。
重厚で長いお話の番外編の面白さ、というのを目いっぱい実感できます。

こういう番外編が作れるのは何冊にも渡って書かれるライトノベルというジャンルの
特性、いいところ、だと思います。


珍しく、今巻では自分も読んでいるお話がいくつか題材だったので
遠子先輩の言っていることが面白く読めました。
面白く、というか・・・
坂口安吾「桜の森の満開の下」を「恐ろしい」と言いながらも
「う~ん、美味しい!」と言ってしまう先輩は、さすが文学少女・・・!
と唸ってしまいます。
「深く繊細な味わい」で、「凄絶なほどに美しい」のは同意しますが!
あのグロさとホラーな緊張感を食べて「目を閉じて、じぃぃぃぃぃんと」は出来ません!


ほかには、
「見習いの、発見」での「銀河鉄道の夜」
「おやつ」での「かもめのジョナサン」も既読でしたが

菜乃が解説するお話は遠子先輩が語るよりも庶民的で分かりやすいというか
物語の登場人物について、一緒に考えて行けるので、寄り添いやすいですね。
実はこっちのほうが好きかもしれません。

「かもめのジョナサン」は後半はやっぱり好きになれない本でした。
宗教色強くなってくると先輩が言うように「おなかの中にズシンとたまる」感じ。
前半の、ジョナサンががんばって上手く飛べるようになっていく爽快感は好きなんだけどな~。


ということで、既読本が題材だとやはりもう1段階面白く読めるということがわかった最終巻1冊前。
これは、やはり題材になったアレコレを読んでから、始めから読み返すべきでしょうか・・・!?

それだけの価値がある物語だと、今更ながらに再認識しています。
何年もかけて、読み込んでいく価値のあるものだと。