2011年6月25日土曜日

機械の仮病 / 秋田禎信




「恋人が機械であったというのは、どういう気持ですか?」



という、 秋田禎信。
無自覚のうちに、体の中の一部が(内蔵とか、骨とか、血管とか)機械に置き換わってしまうという病気
「機械化病」を巡る連作短編。

機械に変わるのは体の中だけなので、見た目には分からない。
それどころか自覚症状もない。精密検査をしないと自分にも他人にも分からない。
しかも機械化した部分は病気にならないので、むしろ体調は良くなるという病気。

一話目は、別れた直後に死んだ恋人が、前例のない「体の全てが機械に変わっていた」症状だったというお話。
他に、小学生の息子のクラスでのいじめの原因が機械化病だったおはなしとか、
プロのランナーだった男が機械化病が原因で正式な大会に出られなくなったけど走ることをやめられないおはなしとか、
自殺志願者サークルの中で、機械化病にかかった故になかなか死ねない人のおはなしとか、


すべて機械化病が原因にあるのだけど、物語は機械化病について語るのではなくて
ちょっと変わった要素が社会に加わった世界の、普通の人間たちのお話を語ります。
だから「機械化病」とはなんだったのか、ということや、その後の社会がどうなっていったのか、ということは分からないままです。


始終、閉塞感の漂う1冊。
でも独特の雰囲気がありますね。好きです。

タイトルの意味を深読みしてしまうけど、やっぱり良くはわからないな。

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