2010年3月12日金曜日

日本辺境論 / 内田樹

日本辺境論 (新潮新書)


もっとも尊敬する人と聞かれると内田樹先生と答えたい。
この人の言う事にはいちいち頷いてしまうような説得力があります。

「世の中の人はみんなこう思っているけど、実はこういう事なんだよ」

ということをたくさん教えてくれるので好きなのです。


と、いうわけで「日本辺境論」。
日本という国の文化性や国民性を、地理的な「辺境」に位置していることから説明しようという本です。

地理的に辺境に位置していた日本は、
古くは中国に倣い、後には欧米列強に倣い、「世界標準」にキャッチアップすることを目指してきたので
自分たちが世界標準になろうとは「考えることができない」のだというお話です。


自分たちの国はこういう国なんだよ!
ということを語ろうとすると、「他国との比較」によってしか語ることが出来ない。


内田樹はそれが悪いことだとは言わない。
「こうなったらとことん辺境で行こうではないか」と言っています。
それこそがこの国の、他にマネの出来ないアイデンティティなのではないかと。


で、「辺境人の『学び』は効率がいい」とか、

表意文字(漢字)と表音文字(かな)のハイブリッド言語である日本語こそが
「余人を以ては代え難い」日本人の個性であるとか

そんなお話をたくさんしてくれます。


日本でマンガが特異的に発展しているのが
日本語によるものだっていうお話が面白かったですね
(先生自身、他の人の受け売りを話しているコトですが)。
ふきだしと絵柄を並列処理するマンガは、漢字とひらがなを並列に読める日本語だからこその表現だと。


内田樹が何度もいろんなところで書いていることを一文抜粋しておきたい。


>「学ぶ力」とは「先駆的に知る力」のことです。
>自分にとってそれが死活的に重要であることをいかなる論拠によっても証明出来ないにもかかわらず確信出来る力のことです。
>もし、「いいこと」の一覧表を示されなければ学ぶ気が起こらない、報酬の確証が与えられなければ学ぶ気が起こらないという子どもがいたら、その子どもにおいてはこの「先駆的に知る力」は衰微しているということになります。


「これを勉強したら将来お金が儲かるの?」
とか聞いてたら何にも出来ない大人になっちゃうよと、そう言っているのですね。

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