2011年10月28日金曜日
紫のクオリア /うえお久光
クオリアという言葉がある。
あなたがSF者ならあるいは耳にした(読んだ)ことがあるかもしれない。
感覚質、と訳されることもあるそれは、ようするに『頭の中で生まれる、感じ』のことで、
例えば、赤い色を見て赤い、と感じるその『感じ』、
青や紫を見た時の、その『感じ』のこと。
嗅覚でも痛覚でも物事に関する感想でも、とにかく何かを感じた時のその印象のこと。
それは、人それぞれで、完全に共有することは出来ない性質のものである。
つまり、
「他人が赤を見ているとき、自分と本当に同じ色を見ているのだろうか?」
ヒロインのゆかりは、生物がロボットに見える。
本当にそう見えているかは、誰にもわからない。
ただ、本人がそういうのを信じるだけである。
というSF。
ライトなふりして、結構ハードなSFで、SF者大喜びです。
二編の中編とエピローグで、二編目は同じ登場人物で平行世界モノ。
谷川流「学校を出よう!」に雰囲気似ていて、どちらかが好きな人にはもう片方もかなりオススメ。
波動関数とか、コペンハーゲン解釈とか、哲学的ゾンビとか色んなワードが出てきて、中二な方々にもオススメ。
「ねぇガクちゃん。……勘違いならいいんだけれど、これって、ガクちゃんのじゃない?」
「……あのね、ゆかり。何回だっていうけどね、あたしにネジは使われていません」
2011年10月7日金曜日
GOSICKsIV‐ゴシックエス・冬のサクリファイス / 桜庭一樹
バビロニア・ウェーブ / 堀 晃
2年近い調査で明らかになた定在波の姿は、
両端がレーザーを反射する作用をも持つ重力場からなる、
直径1200万キロメートル、全長5380光年の、
銀河系を垂直に貫くレーザー光束だった。
地球から3光日という太陽系の端っこにとんでもないスケールの舞台があって、
そこで不可思議な出来事が起きる。
その原因は何か?
そもそも何故こんな光束が存在するのか?
地球からやってきた教授の謎めいた目的とは?
というストーリーは、まさにハードSFそのものといった感じ。
つまり、SF的なもの・舞台についてのあれこれがメインで、決して背景にはならない。
ラストで明らかになるバビロニア・ウェーブの全貌には、急激に視野が広がる、SFならではの気持ちよさを感じさせてくれます。
30年以上前の本ですが、古さを感じさせない良作。
・・・古さといえば、ひとつありました。
「セチ」が「CETI」と書かれています。
今は、
「SETI」―Search for Extra-Terrestrial Intelligence―地球外知的生命体探査
と言います。
当時は、communication with extra-terrestrial intelligence―地球外知性との交信
だったのですね。
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