2011年12月14日水曜日

製鉄天使 /桜庭一樹

製鉄天使


東海道を西へ西へ、中国山地を越えて、 
さらに下ったその先、地の果てみたいな、 
日本の最果て……鳥取県に、 
すげぇ女たちがいたのを知ってるかい? 
そいつらはエンジンを唸らさせ、 
鉄の武器を自在に操っては血みどろの戦いを繰り広げ、 
そして……アリゾナみたいに広かった中国地方の制覇に挑んだものの、 
ある夜、とつぜん、全員でもってどこかにきえちまってねぇ。 
そのせいで、族のあいだじゃ、 
永遠の伝説ってやつになったのさ。 


という、燃え盛る魂「赤緑豆小豆」の、爆走する青春を描く物語。 

「赤朽葉家の伝説」のスピンオフ、だったと思うけど舞台以外の繋がりが思い出せない…。 


「族」の時代から「イジメ」の時代への過渡期、という時代感を背景にした、いつもの桜庭一樹です。つまり描くのはオンナの生き様。 

主人公、小豆の人生記が始まるのかなと思っていたら、青春記だったので、ちょっとだけ拍子抜けしたでござる。 

ストーリーとしては、鉄を操る主人公が夜な夜なバッタバッタと敵を倒してまわるってだけで特別「こりゃあすげぇ」という感じもないですが、この空気はすきだな~。と思います。 

超能力バトルなんかやってるもんで、普段よりちょいと軽めで読みやすくもありました。 
オチも好きですよ。 

ずーっとテーマが同じ作家って、珍しいのか良くいるのか、どっちなんでしょう?


「あたしら、ハイウエイに恋してる! 
純情咲かせにゃ、十三歳がなくぜ!」

2011年11月26日土曜日

ゴールデンタイム3 仮面舞踏会 / 竹宮ゆゆこ


ゴールデンタイム〈3〉仮面舞踏会 (電撃文庫)



 「初めて男の子とそんな事態になるとしたら、それは絶対パリだよね、って。恋人たちの街、パリ。エッフェル塔の見えるプチホテルで……心から愛してる人と……。運命の、一夜だよ。」

馬鹿っぽいんだけど、寂しさを感じたり郷愁を感じたりしてしまう。
見ていたいんだけど、見ているのが痛くて恥ずかしくて、でもつい見てしまう。
この人の作品はいつもそんな感じ。
先も気になる。

2011年11月6日日曜日

"葵" ヒカルが地球にいたころ……/野村美月



「文学少女シリーズ」野村美月の新作は、源氏物語モノでした。 

主人公が是光(藤原惟光)とヒカル(光源氏)で、ヒロインが葵。 
ヒロインは寅さん方式で次巻は夕顔だそうです。 

テイストは前作に似ているけど、主題のせいかちょっと軽くなった印象。 
主人公ズもコノハや遠子先輩ほど魅力的かというとうーん。 

ストーリーはとっても良いです。 
次巻も読みたい本ではあります。

ヴィークルエンド /うえお久光

ヴィークルエンド (電撃文庫)

今回のネタは「共感覚」。
数字に色がついて見えるとか、音に色がついて見えるとか、そういうアレ。

生まれてくる子供たちが、すべて「共感覚障害」を持っているという世界で
共感覚を増幅・制御するサプリを使って、自分の体を「乗り物」として錯覚させることで、その「乗り物」でレースを行う、というお話。


共感覚のあふれる世界というものがしっかり構築されていて
それが物語のがっちり食い込んでくる感じはSFとしてとっても良作。

レースのスピード感も、うえを久光の本領といった感じで好きです。

2011年10月28日金曜日

紫のクオリア /うえお久光






クオリアという言葉がある。
あなたがSF者ならあるいは耳にした(読んだ)ことがあるかもしれない。
感覚質、と訳されることもあるそれは、ようするに『頭の中で生まれる、感じ』のことで、
例えば、赤い色を見て赤い、と感じるその『感じ』、
青や紫を見た時の、その『感じ』のこと。
嗅覚でも痛覚でも物事に関する感想でも、とにかく何かを感じた時のその印象のこと。
それは、人それぞれで、完全に共有することは出来ない性質のものである。
つまり、
「他人が赤を見ているとき、自分と本当に同じ色を見ているのだろうか?」



ヒロインのゆかりは、生物がロボットに見える。
本当にそう見えているかは、誰にもわからない。
ただ、本人がそういうのを信じるだけである。

というSF。
ライトなふりして、結構ハードなSFで、SF者大喜びです。

二編の中編とエピローグで、二編目は同じ登場人物で平行世界モノ。


谷川流「学校を出よう!」に雰囲気似ていて、どちらかが好きな人にはもう片方もかなりオススメ。
波動関数とか、コペンハーゲン解釈とか、哲学的ゾンビとか色んなワードが出てきて、中二な方々にもオススメ。


「ねぇガクちゃん。……勘違いならいいんだけれど、これって、ガクちゃんのじゃない?」
「……あのね、ゆかり。何回だっていうけどね、あたしにネジは使われていません」

2011年10月7日金曜日

GOSICKsIV‐ゴシックエス・冬のサクリファイス / 桜庭一樹



GOSICKsIV‐ゴシックエス・冬のサクリファイス‐ (角川文庫)



クリスマスを控えた聖マルグリッド学園は、慌しくも楽しげな雰囲気に包まれている。
今日はお祭り。
生徒たちが仮装して、「駒」になって行われる、「リビングチェス」が始まろうとしていた。

という、ゴシックsの4冊目にしてゴシック最後の短編集。

平和だった最後の一日。
喧騒の陰で明かされる、グレヴィールの深淵なるドリルの顛末とは・・・?
ほか3編。


このあとに、つらい運命が待っていることを知っているからこそ、
優しい気持ちで読める一冊。

バビロニア・ウェーブ / 堀 晃






 2年近い調査で明らかになた定在波の姿は、
 両端がレーザーを反射する作用をも持つ重力場からなる、
 直径1200万キロメートル、全長5380光年の、
 銀河系を垂直に貫くレーザー光束だった。



地球から3光日という太陽系の端っこにとんでもないスケールの舞台があって、
そこで不可思議な出来事が起きる。
その原因は何か?
そもそも何故こんな光束が存在するのか?
地球からやってきた教授の謎めいた目的とは?

というストーリーは、まさにハードSFそのものといった感じ。
つまり、SF的なもの・舞台についてのあれこれがメインで、決して背景にはならない。
ラストで明らかになるバビロニア・ウェーブの全貌には、急激に視野が広がる、SFならではの気持ちよさを感じさせてくれます。

30年以上前の本ですが、古さを感じさせない良作。

・・・古さといえば、ひとつありました。
「セチ」が「CETI」と書かれています。
今は、
「SETI」―Search for Extra-Terrestrial Intelligence―地球外知的生命体探査
と言います。

当時は、communication with extra-terrestrial intelligence―地球外知性との交信
だったのですね。