ラベル 小説 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 小説 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2017年3月2日木曜日

スターメイカー     オラフ・ステープルドン





ステープルドニアンは全てのSF作家の夢の一つだそうですが、そのステープルドンの代表作。

宇宙のはじまりから、滅亡、その先までを壮大という言葉では足りないほど大掛かりに描きます。


あるイギリス人が突然肉体の束縛を離れて、時空を超え宇宙のかなたへと探索の旅に出ます。
主人公は宇宙中のさまざまな「人類」たちに出会い、観察し、その一部になって惑星間戦争・恒星間の共棲・銀河間の繋がりなどを「経験」します。
さらに至高の創造主「スターメイカー」との出会いを経て、また地球の一人の人間に戻ってくるというお話し。

「銀河」という一つの精神の一部にまでなってしまった主人公が
ただの人間になってしまってから回顧するという本なので、
あまりにもヒトの理解をかけ離れた事象について

「人間である本書の著者に言えることは何もない」

とばっかり言っています・・・。

壮大すぎてちょっと読むのが大変。
少しずつ少しずつ読み進めてやっと読み終えた感じです。

SF者なら読んでおいても損はない1冊
「バーナード嬢曰く、」でも神林がネタにして(というか独り言にして)ましたね。

2014年5月22日木曜日

テキスト9 / 小野寺整

テキスト9 (Jコレクション)


「その独創的な内容で選考会でも物議を醸した」と裏表紙に書かれるような本。

うん、わけわからんかった。メタSF、もしくはメタメタSF、かな?
あらすじをうまくまとめることは出来そうにありません。


なんとなく理解できそうなところがまたタチ悪いというか、結局理解は出来ないように出来てるような気がする。
「後藤さんのこと」くらい突き抜けると諦めも付くという物だけど。

いろんな伏線がリンクしていく気持ちよさがあります。
まったく異なる知性同士が「翻訳」されて、お互いにコミュニケーションできるようになっているとか、感情操作薬エンパシニックとか、「スタッシュ」の概念とか、大量に盛り込まれているSFガジェットがそれぞれレベル高くてとても楽しいです。

総じて言うなら、大変面白かった。(特に現代の)SF的な面白さに溢れていると思う。
がんばって読み解こうとすればさらに面白いだろうな。
その気力が出たらチャレンジしてみたい。

2012年10月30日火曜日

ゼロ年代SF傑作選 / SFマガジン編集部

ゼロ年代SF傑作選 (ハヤカワ文庫 JA エ 2-1) (ハヤカワ文庫JA)


なんでも奴が言うにはーーこの「大空」の重力方向の遥か彼方、つまりずっとずっと下に、大空と同じくらい広大な個体の平面があるのだという。
そんなものがあってたまるか、と私は思った。


という、秋山瑞人の「おれはミサイル」ほか7篇を収録の日本SFのゼロ年代を代表する「リアル・フィクション」を担う作家たちによる短編集。

秋山瑞人「おれはミサイル」
冲方丁「マルドゥック・スクランブル"104"」
長谷敏司「地には豊穣」(「あなたのための物語」のスピンオフ)
から桜坂洋、新庄カズマ、と素晴らしいメンツが続く。

スピンオフが3つも入っているのは残念な気もするが(全部読んでいるので問題はないにしても)、それぞれ純粋に短編として楽しめるのでまあ良し、かな?

秋山瑞人の陸海空三部作のひとつを読むためだけに手にとっても後悔はしない一冊。
陸はいつ読めるんだ。

ゼロ年代には小川、野尻、林、小林、飛もいるし、円城、伊藤もあることを考えると、なんと豊穣なSFの時代であることでしょう。

10年代もよろしくお願いします。

メグとセロンVII 婚約者は突然に / 時雨沢恵一

メグとセロンVII 婚約者は突然に (電撃文庫)


「セロン君は、私を好きだと思いますか?」

という、メグとセロンⅦ、最終巻。概ね大団円?

大変楽しめました。
メグの混乱ぶりが可愛いです。
部員たちの信頼してる感と、見守り様が好きです。
予測を外れるような展開にはならない安心感がこのシリーズのいいところです。
そしていい人ばっかり出てくるようでいて、スパイスの様に悪人が登場します。

結局、後のシリーズほど巻数が多いという事になってしまってますね。
こうなるならアリソンももうちょっとやってくれても良かったのに…と思ってしまうのはファン故か。


ちょっとあっさり終わってしまったような感があって物足りないけれど、
来年には「アリソンとヴィルとリリアとトレイズとメグとセロン(仮題)」があるのでそちらを期待して待つことにしましょう。

2012年10月3日水曜日

人類は衰退しました ⑥ / 田中ロミオ

人類は衰退しました 6 (ガガガ文庫)

「にんげんさんも」「そらを」「じゆうに」「とびたいので?」
「いいえ」
「たやすいことですが?」
「いいえ!」

という人退、6。
鳥人間コンテスト、開催!な「妖精さんたち、すかいはい」と、
同類誌即売会、開催!な「妖精さんたちの、さぶかる」の二本でお送りします。

にんげんさんたちも、衰退してると言うわりには色々趣味の活動してたりイベントに数万人動員できたり、結構活発ですね。
いえ、「せっていてきとう?」、とか「ごつごうしゅぎてき?」とか言ったりはしませんよ?

楽しく読ませていただきました。
末長く読みたい気持ちになれる作品です。

2012年10月2日火曜日

人類は衰退しました ⑤ / 田中ロミオ

人類は衰退しました 5 (ガガガ文庫)


「それは、たやすいねがいです?」

人類は衰退しました、その5冊目。
待望の過去話の登場で、大増ページでお送りします。

まだ9歳の子どもだった「わたし」の、学舎での回想なお話、「妖精さんの、ひみつのおちゃかい」
と、
なぜか(もなにもないですが)世界がドット絵になってしまった「妖精さんの、いちにちいちじかん」の二本です。

ひみつのおちゃかいは、いかにも最終回って感じですが、子ども特有のさみしさが語られていてしっとり読めます。
期間も10年ほどを中編で駆け抜けるので、卒業やラストシーンでは長い時間を感じてしんみり。
今までとはかなり毛色が違いますが、このお話は好きです。
「クリケット」の小ネタも好き。

二話目で通常進行に戻ってるので安心です(?)


「不条理レベルが低いと、どうなるんでしょ?」
「しりあすになる」「すとーりーがくらくなる」「きれいごとがなくなる」「しゃれですまなくなる」「ばくはつおちでほんとにしぬ」

2012年9月11日火曜日

人類は衰退しました④ / 田中ロミオ

人類は衰退しました 4 (ガガガ文庫)



「フフ……落ち込むときは、狭いところに限りますよね……?」


平常運転の第4巻。

里で食べ物が不足して困ってたら、いつのまにか不審な(明らかに妖精さん由来の)食べ物などなどが現れたので工場に調べに行くお話と、
妖精さんの人口過密を解消するために移住しようとしたら漂流して、島の土着植物を遺伝子改造するなどして食べ物(とお菓子)をゲットしようとするお話の2本です。




…食べ物の話ばっかりですね?
文明の衰退期には食べ物、大切ですからね。

工場探検は、「チャーリーとチョコレート工場」っぽくなるのかなと思ってたらちょっと違いました。
あんな感じで探検するのも見てみたかったですね。



この方向でのんべんだらりとやっていってもらえると嬉しいな。
シリアスはたまでいいと思うのですが。


「……むのうで、ひんじゃくな、ぼくら、をみすてないで?」

2012年9月9日日曜日

人類は衰退しました③ / 田中ロミオ

人類は衰退しました 3 (ガガガ文庫)



 「見ないで。醜いわたしを見ないでください」


人類がゆるやかな衰退を迎えてはや数世紀、なファンタジー風SF③。
今回は大長編です。映画版です。

ヒト文明についての記録を残そうという「ヒト・モニュメント計画」。
人類文明末期の、過去の未来都市遺跡を探検することになった「わたし」と「助手さん」は
何百年ぶりかに電源投入された都市の中で遭難してしまいます。
体力を使いはたし、水も尽き、命の危機の只中で見たものとは。


過去の文明視点のおかげで、妖精さんの謎や情報断絶の理由などにも少し回答が与えられてSF的に嬉しいお話でした。
スタートレックネタも出てくるし(オヤジ)。

それと滅びた未来技術が垣間見れたのも。
「スクリプトが組める人間ひとりいればどんな建物・機器・部品でも作れる流体金属、ネット上のサンプルソースで日曜大工ならぬ日曜工学」
とか「塩基計算機で見せかけの魂を得た機械」とか、上手く使ってて楽しいです。
結末も大長編らしくまとめられてます。こういう解決策か…!と。余韻もあって好きな感じですねえ。
巻を重ねるごとに満足度が上がってます。次も楽しみ。



「いきてはおれぬです?」
「あれはくるです」「ひかりとかはへいきなんだけど」「でんじばにはいられぬですな」「むりむりだー」「かきみだされるゆえ」「くるおしくなることも」「いきるちからをうしなうとのこと」「かなしみをもたらしすぎます」「こまるー」「だから」「にげなきゃです?」

2012年9月6日木曜日

人類は衰退しました② / 田中ロミオ



人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫)



「こ、このスプーンです!このスプーンがわたしをこんなポータブルな体に!持ち運びのしやすい体に―――っ!」 

ほのぼの黄昏SF、②。 
よりSF色強くなっているようです。 
ドラえもんの道具的に妖精さんの不思議アイテムで大変なことになる「人間さんの、じゃくにくきょうしょく」と、 
タイムリープでループでバナナでスリップな「妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」の2本でお送りします。 

タイムスリップ物は楽しい。 
ネタバレを避けて感想を書けないのが残念ですが、「すぐおいしいけど、すごくとおくにとばされるばぐが」あったばーじょんのバナナで飛んだ先のジョシュサンが二重の意味で関わってきているあたり上手いな〜と。 

不条理込みでなんでもアリ、な妖精さんのせいにしておけばどんな話でも出来るこのシリーズは可能性無限ですねえ。 

続刊でどんなトンデモに発展してくれるのか楽しみです。 

2012年9月5日水曜日

千年ジュリエット / 初野晴

千年ジュリエット


「教えて欲しいんじゃなかったのか?」
「な、なにをですか?」
「ハードロックにきまっているだろうっ」


日常ミステリ"ハルチカ"シリーズ、第4弾。
吹奏楽部で全国を目指す真面目な青春ミステリの皮を被って、どこまで本気で読めばいいのかわからない不条理ギャグが本質と思わせて、
オチは重めのテーマでしんみりずっしりさせる異色ミステリです。
爽やかな表紙は詐欺です。トラップです。

今回は文化祭を巡る連作短編。

一番アホだと思ったのは「失踪ヘビーロッカー」。
ハードロックで人生を表現するアメリカ民謡クラブの部長が、本番直前失踪した!
彼はタクシーの運転手にこう告げていた。
「そのまま法定速度を守って、俺がいいというまでこの街をぐるぐるまわるんだっ」
部長の身になにが起こったのか!?
…アホです。

トリックについて考えるのが面白かったのは「決闘戯曲」。
右目が見えず、左手が使えなかった三人の決闘者。
彼らは如何にして勝利したのか?

締めの「千年ジュリエット」は最もアホさがなくてじっくり楽しめてこれが一番好きかな。
大学病院の一角で密かに集まりを開く5人の入院患者。彼女たちが始めたネットでの恋愛相談。
その1人が南校の文化祭を訪ねてくる。
○○トリックは、もうちょっと引っ張って欲しかったかも。



ーーキョウコが座るばしょには、紫色のバッジとイチゴミルク味の飴が置かれていた。

2012年8月25日土曜日

人類は衰退しました1 / 田中ロミオ

人類は衰退しました 1 (ガガガ文庫)


 「単純に言えば、妖精はたくさん集まると面白いことをおっぱじめる、ということだ。 
 人間以上の知性とリソースと効率と情熱を総動員してな」 


ゆっくりと人口を減じ、科学技術も失われ、都市は放棄され、生活圏も縮小し、今にも消え去ろうとしている、人類。 
そして、引退したヒトは、地球人類の座を彼ら「妖精さん」に明け渡した。 
という、「人類は、衰退しました」。 

ほのぼの終末モノと言うことで「ヨコハマ買い出し気候」かと思いましたが「ねこめ~わく」の方でした。 
小さくて可愛い生き物達はヒトが大好きで、ヒトの状況はとても寂しい物ですが、悲壮感はありません。 
なにしろ後を継ぐ者たちがいるのですから。と言うと、ほら一緒。 

主人公は、ヒト最後の学校を卒業した「わたし」。 
卒業後の進路を、妖精とヒトの仲立ちをする「調停官」に求めて故郷に戻ってきたところから始まります。 

妖精さんを捕まえて名前を付けたら女神に祭り上げられたり、妖精さんが一夜にして未来都市と巨大ロボを作り上げたりする第一話と、 
妖精さんが折り紙で光合成原核生物を作ったら 
進化しちゃって大変…?な第二話で構成されています。 

二話目のオチは、SukosiFusigiな感じでとても良かったです。 
内容の薄い、ただのほのぼのかと思っていたので予想外に当たりでした。 
ヒト以上の知性を持った後継種族が、ぽやんとした子供もみたいな妖精、というのも面白い。 
続刊にも期待です。 

 「にんげんさんだー」「うおー」「まじなのです」「ちかよってもへーき?」「おこられない?」「これからどーなってしまうのかー?」「あやー」「おおきいですー」「ごぼてんすきです?」「ひえー、ひえー」「のっけてくださいー」 

2012年8月7日火曜日

天獄と地国 / 小林泰三

天獄と地国  (ハヤカワ文庫JA)


「人類が太古に住んでいたという、原初の世界さ。そこでは重力が外から内へと向かってたんだろ。」

ハードSFを書かせたら、とことんハードな小林泰三の、短編から長編に昇格した一作。

頭上に地面、足下に星空が広がる世界、
全てのものは手を離しただけで空の彼方へ落ちて行く世界。
人々は僅かな資源を、分け合い、奪い合い、どうしようもなく衰退しながら暮らしている。
明らかに生き物が暮らすには向かない、過酷すぎる世界。

主人公カムロギは、地面の上にある、と神話が言う「地国」を目指して北限の地を目指す。

ちょっと読み進めれば分かるので書いてしまいますが、要するに巨大な宇宙コロニー(的な物)の外側にへばりついているのですね。
例によって出てくる数字を計算すると、世界の全容が詳しく分かる仕掛け、だそうです。

計算結果はこちらへどうぞ↓
http://www2s.biglobe.ne.jp/~ttsyhysh/diary/di0207d.html#020722

答えが分かるとものすごいセンスオブワンダーを感じることができるんですけどね。
これほどの驚きはなかなか他の人ではないですよ!
でも、読者の何%が計算すると思ってるんだ…?

「リヴァイアス」みたいな怪獣大決戦がメインで、全体的にはスペクタクル。
ナタの出生話は、極限状態の狂気って感じで良かったです。


以下愚痴。
ラストはどう取れば良いかわからずぽかーんとするしかない感じ。
長老ザビタンのネタは、笑うところか悩む。萌えを狙ったのでは、ないよね…?
カムロギ、生活困窮具合と比べてインテリ過ぎない?

2012年3月31日土曜日

春待ちの姫君たち / 友桐 夏

春待ちの姫君たち リリカル・ミステリー (コバルト文庫)


 「ほかの子たちとは区別して特別なただ一人だけにその権利をプレゼントしようって、
 入学直後から決めていたの。」
 「あたしの名前を」
 「赤音にだけ呼ばせてあげる――」

というリリカル・ミステリー第2弾。
今回は別にミステリじゃないような。
叙述トリックが含まれてるから?whoもhowもwhyもありませんが、まあいいか。

今度はさんざん後味悪めに進めておいて最後に救いがあるお話でした。
キャラクターたちそれぞれの現状認識の齟齬がメインだったとおもいますが
あんまり上手にそのズレを表現できていない文章でした。

いまひとつ。

白い花の舞い散る時間 / 友桐 夏

白い花の舞い散る時間 (コバルト文庫)




 だから、あたしたちはそれぞれまた新たな仮面をつけて会ってみましょうよ。
 本名でもハンドルネームでもない、新たな名前を用意するの。


という、「リリカル・ミステリー」です。コバルト文庫です。

同じ塾に通っているというだけの共通点を持っていて、しかし互いの顔も知らない5人が、
本名を隠したままオフ会を開催する。
舞台は人里はなれた洋館「ムラサキカン」。

さて、誰が誰なのか?


というお話だと思ったら、本命はそこではなくて、それぞれの家庭環境がみんな特殊で、あれ、ちょっと共通点が・・・?
というお話でした。

冒頭の展開から知能的かけひきな物語を期待してしまったのでちょっと肩透かし。
語られる家庭環境から導かれる物語を考えるというのはミステリっぽくて良かったけど
ちょっと後味悪めなラストでカタルシスがないのですっきりしませんでした。

米澤穂信関連のストリームで褒められていたので、期待しすぎだったかもしれません。


悪い意味でのコバルトっぽさはあんまりなくて
良い意味で子供向け少女小説しているのでこれはこれで。
デビュー作なので多少文章がこなれてないのはスルーして、もう1冊読んでみます。

2012年3月28日水曜日

故郷から10000光年 / ジェイムズティプトリーJr.

故郷から10000光年 (ハヤカワ文庫SF)


見据えるべきは小説であり、それがここにある。
確実な将来が約束された作家の第一短編集。
わたしは、たいへん楽しく読んだ。
あなたにも楽しく読んでいただけると思う。


――序文より


この序文に相応しい一冊である。
ただし、この年代のアメリカSFに多少親しんでいないとちょっと戸惑うかもしれない。

タイトルの秀逸さは最高。
短編集のタイトルであって、この名の作品がないのが残念です。

2012年3月13日火曜日

地球の長い午後 / ブライアン W.オールディス


地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)




 老いた世界にふさわしく、地球にはクモの巣がはりめぐらされたのだ。 

はるか未来。 
太陽が大きく赤く膨らみ、地球は熱く熱せられている世界。 
地上に生きる動物はたったの5種類となってしまい、地を支配するのは植物たちだった。 
という「地球の長い午後」。1961年の作品です。 

図書館の本ですが、とっても年季が入ってます。ボロボロの一歩手前。往年の名作感たっぷり(?) 

遠未来の終末的世界設定はマンアフターマンっぽくて楽しいです。 
自転が太陽に対して完全に止まってしまっているので地球の半分は永遠の夜、半分は永遠の昼。 
その昼部分の大陸はひとつの大木、ベンガルボダイジュが覆っています。
植物たちは消えた動物たちの生活圏を肩代わりして動けるようになり、弱肉強食の争いをしています。 
人間はというと、生き残った5種類の動物にかろうじて入っていて、捕食植物から隠れ生きる生活をしている。 
そして月は地球ー太陽間のラグランジュ点に固定されていて、地球との間に宇宙を渡る植物ツナワタリによる糸が張り渡されている。 

そんな世界です。 
実際には自転が止まると昼と夜の温度差で、特に黄昏地域は常に暴風域になって暴風グレンたちは吹き飛ばされてしまうと思いますが、その辺は古い本なので…。 

ストーリーよりは世界の説明がメインな感はありますけれど、一読の価値はあり。

天冥の標Ⅴ: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 / 小川一水


天冥の標Ⅴ: 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河 (ハヤカワ文庫JA)




「葉物は鮮度が命だからな」 

という天冥の標、第5巻。 

3,4は正直いまひとつだと思っていましたが、 
5は文句なく最高です! 

今回は、今から遡ること6000万年前、地球から遠く離れた惑星の海の中で「我あり!」と覚醒したノルルスカインの誕生から長い旅の話と、 
西暦2349年、アステロイドベルトの小惑星の一つで細々と農業を営む農夫タックヴァンディのお話。 

超銀河団規模の舞台とアステロイドベルトあたりでウロウロしてるお話が並行で語られるのが面白いですね。 

サンゴ虫(に似た生き物)を(人間でいう)ニューロンのひとつひとつのようにして 
そこから発生した意識、という地球外知性というのは斬新でわくわくしますよ。 
しかもサンゴたちそれぞれも自意識があるという。 
(他にも前例があるのかも知れないけれど、私は知らない。あったら凄く知りたい。) 
つまり、隣り合った細胞と細胞の化学反応から意識というものが現れているのなら 
隣り合ったサンゴ虫とサンゴ虫の相互反応の積み重ねから意識というものが生まれても不思議でないというネタです。 

小惑星農業のほうも、宇宙で農業するっていうのがどういうことなのか、興味深いことしきりです。 
アニーがアレだったあたりは、こう来るか~!と膝を叩いてしまう展開で大興奮。 


間に小ネタとして、「銀河ヒッチハイクガイド」ネタが挟まれています。
スポンジが大変重要視されていてタオルがとっても貶められています。 
つい笑っちゃったけど、ちょっと強引じゃないかな~? 

5巻までの各巻を面白い順で並べると 
2>5>>>3>4、かな。 
1巻はまだ評価できません。巻が進むごとに1巻が面白くなっていきます。 

ところで、 
0.8光速で進むオムニフロラがボイドを渡るのに3000万年というのはずいぶん早い気がします。 
Wikipediaによるとボイドの直径は1億光年以上。 
真ん中を渡る必要はないけど、ボイドの端っこをちょっとショートカットしただけ? 


「ぼくは思ったよりもたくさん見てしまったから」 
「何を?」 
「人が、可憐に滅んでいくさまを」 

2012年3月3日土曜日

群青神殿 / 小川一水

群青神殿 (朝日ノベルズ)

ここはニライカナイだ。 
おまえが探してきた幻の地、隠された海の秘密だよ 



という海洋・深海SF。 
小川一水、いまだマイナーなりし頃の作です。 
メタンハイドレートを探す潜水艇乗りが主人公。 
SFガジェットは、何処かから現れて大型船を襲うようになった生物。 

あとがきで著者も触れているように、「日本沈没」の深海で味わったワクワク感と緊張感をこの作品でも体験できます。 

最後に現れる幻想的な光景は一読の価値あり。 
新書で再販してるとは知らなかった。 
新作だと間違えて読むとがっかりするかも知れません。

2012年2月19日日曜日

桜色の春をこえて / 直井章

桜色の春をこえて (電撃文庫)


           カーサ
 「帰ろう、私たちの 家 へ」

絵に描いたように不幸な女の子がふたり、
突然同居暮らしをすることになる。
はじめは歯車の噛み合わないふたりだけどだんだんお互い掛け替えのないものとなっていく。

というお話。
主人公の一人称がクールで好感。
不幸具合も容赦なしで、読んでて胸が苦しくなります。

著者のデビュー作ですが、
特筆するほど上手いところはないし、
他に本を出しているか調べる気になるわけでもない。
でもなんか好きです、この本。
桜の花が舞う情景が綺麗です。
どこで何を見てこれを読むことにしたかも忘れてしまいましたが、良い出会いだったと言えます。


しかし、単語や文法の間違いが多い・・・。
中高生が読むライトノベルだからこそ、こういうところはキチンとして欲しいですよ。


2012年2月13日月曜日

約束の方舟(下) / 瀬尾つかさ

約束の方舟 (下) (ハヤカワ文庫JA)


「ああ。きれいだろ、俺たちの新しい地球は」


星間移民船ジュブナイル、後編。

さらに3年経ち、シンゴたちは18歳になり、船は後10日で目的地タカマガハラⅡの周回軌道に乗る予定。
人々と共生しているゼリー状生命ベガーを巡る、子供たちと大人たちとの溝はむしろ深まっていた。

そんな中、スイレンの書き上げたベガーの生態についての論文が新たな火種となり…。

というお話。



とっても良いジュブナイルSFでした。
目的地到着という希望の日が、ベガーに対する社会のあり方が変わる変革の日でもあって、
その日までになんとか力を付けてベガーを護ろうとする子供たちという図式が、読んでいて応援したくなってしまいます。

悲壮なまでのがんばりを見せるキリナ、スイレン、ケンたちとあくまでお気楽な彼女の対比が面白い。
スイレンは幸せになってくれたのでしょうか…?

ラストの余韻感も好きです。
鯨というと、「クジラのソラ」のクジラを思いうかべてしまいますが、関係あるのかな?
読み返してみると発見が、あったりすると楽しいのですがさて。



「シンゴは偉くなった」
「六年前よりずっと頼もしくなった」
「わたしもがんばらないと」
ーーもうすぐ旅は終わる。